アクティビストと企業統治のパラダイムシフト : 機関投資家、取締役会との共進化
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- 田村, 俊夫
- 一橋大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Activists and the Paradigm Shift in Corporate Governance
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抄録
・ 筆者は、2014年1月発刊の資本市場リサーチ論文「アクティビスト・ヘッジファンドと企業統治」において、2013年末までの米国におけるアクティビスト・ヘッジファンドの状況を分析した。当時は、アクティビストが企業統治にもたらした変化が一時的なものか不可逆的なものか、なお議論があったが、2014年以降の状況を経て、アクティビストは米国企業統治の重要な構成要素として定着したという幅広いコンセンサスが生じている。本稿では、この「分水嶺」となった2014年以降の期間におけるアクティビズムの進展を分析し、米国における企業統治体制の根本的変化について考察する。・ 本稿ではまず、最近のアクティビスト・ファンドの状況をマクロ的に概観し、主要な米国アクティビストの活動を個別案件に立ち入って分析する。さらに進んで、新しい企業統治体制における主要プレイヤーであるアクティビスト、機関投資家、取締役会の変容について分析するとともに、アクティビストへの対処の新しいスタンダードについても紹介する。最後に、アクティビストの興隆が引き起こしつつある企業統治のパラダイムシフトについて考察する・ アクティビストが質的に飛躍を遂げた契機は、「株主が取締役を選び、取締役が経営者を選ぶ」という会社法のルールを「再発見」し、自らの持株比率に頼ることなく、機関投資家の議決権を動員する道を選んだことである。年金基金やインデックス等の長期性資金を運用する機関投資家の支持を得る必要性は、アクティビスト自身の長期的価値志向をもたらし、アクティビストによって否応なしに最終決定権者の立場に押し上げられた機関投資家は、経営方針の是非を判断する洗練度を増している。他方で取締役会については、アクティビストと対峙する中で、より独立・客観の方向へ役割認識が変化している。・ このアクティビスト、機関投資家、取締役会の共進化により、経営陣の現行方針を批判するアクティビストの経営提案につき、取締役会(第一審)および機関投資家を中心とする株主(第二審)が独立・客観的な行司役として判断を下す、新しい企業統治のパラダイムが米国を中心に出現しつつある。それは(モニタリングモデルで修正を受けた)会社法本来の姿と重なり合うものである。
収録刊行物
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- 資本市場リサーチ
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資本市場リサーチ 37 63-110, 2015-10
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050287540586130944
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- NII論文ID
- 120006926914
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- NII書誌ID
- AA1285312X
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- HANDLE
- 10086/31015
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles