YouTubeを使った動画配信型会話能力試験の試み

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タイトル別名
  • Journal of Japanese language and international education studies
  • YouTube オ ツカッタ ドウガ ハイシンガタ カイワ ノウリョク シケン ノ ココロミ

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抄録

本稿は、初級レベルの日本語の会話能力を計る同時配信型のオンライン試験をYouTubeの動画配信を使って行った試みの報告である。日本語研修コースで筆者が担当していた「初級会話」クラスでは、コース後半に自国と日本との教育システムの違いを考えさせ、クラスメイトと情報を共有し合う活動を行わせていた。期末試験はその学びの成果を発表する場で、学生は自国の教育制度とその問題点をテーマにスピーチ原稿を書き、スピーチ自体は原稿無しで行っていた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、2020年度第1学期の授業はオンラインで行われることとなった。入国できた学生は1人だけで、彼はクラスメイトの学び合いからスピーチを作り上げることもできず、外出制限がかけられ、日本にいるにも関わらず、授業以外で学んだ日本語を使ってコミュニケーションを実践する機会をほぼ失ってしまった。 これまでのようなスピーチを期末テストとすることはできなくなったため、期末試験の目的を現実の使用場面に近い即興での発話能力を見ることとし、1つの試みとして、Microsoftのパワーポイントと複数の無料の音声編集ソフトを用い、会話の場面が音声以外でもわかるようイラストを組み込んだ動画による試験問題を作成し、YouTubeでそれを限定配信する形式で試験を実施することにした。学生は自分のスマートフォン(以下スマホ)の録音機能を稼働させた状態で、その動画の指示に従って動画内の話者と対話し、そのパフォーマンスの録音データを答案として提出するのである。 結果、このような試験問題動画の作成はパソコンとマイクとインターネット環境があれば、他の物品コストをかけずに作成・実施することは可能であることがわかった。また、面談式試験で生身の教員が発話相手になることで起こりうる教員側の疲労による集中力の欠如などによる評価のブレを回避できることや、学生はPCを持っていなくても受験ができることなどの気づきが得られた。一方で、このような試験を行うには教員、学生共に充分なWi-fi環境があることが必ず必要であることや、問題を作成するには教員がICTツールに習熟する必要があり、それには時間もかかることもわかった。 現状、教員の殆どはオンラインのプロではない。ICTツールの習得・習熟については、教員個人の努力に頼るのではなく、所属教育機関からICTツールに習熟するために充分なサポートがなされることを望むものである。

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