和田心臓移植事件50年 : 医療思想史的一考察 (原田敬一先生退職記念号)

書誌事項

タイトル別名
  • ワダ シンゾウ イショク ジケン 50ネン : イリョウ シソウシテキ イチ コウサツ
  • A Study on Whether the First Heart Transplant in Japan was Morally Justified : Why Does the 1968 Wada Case Matter to Medical History and Bioethics?

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抄録

1968年日本で初めての「和田心臓移植」が行われ今年2018年で50年を経過した。この出来事で明確な基本的事実は、(1)「溺水し蘇生したはずの21歳の男子が地元の病院から30Km離れた大学病院に搬送され数時間後に心臓を摘出され他者に提供されたこと」と、(2)「その提供で心臓移植を受けた18歳の男子が、移植後83日目に死亡したこと」である。事件直後から(1)「ドナーの青年は救命できたのではないか?それを大学病院に運び、死ぬ前に心臓摘出したのではないか?」と、(2)「レシピエントの青年には、もともと心臓移植は必要なかったのではないか?」という疑義がもちあがった。 本稿では、まず、「和田移植」について書かれ、本稿でも参考にした文献の書誌を挙げた。第II節では、1968年に当該執刀者和田寿郎らが雑誌『日本医事新報』に投稿した「心臓移植手術の臨床」を俎上にあげ、問題点をコメントした。この文献は、虚偽と思われる記述も多く、まっとうな医学論文としては認めがたい点があることを指摘した。次に第III節では、日弁連人権擁護委員会の調査報告書「心臓移植事件」の概略を紹介した。こちらの報告書は、論理的にも客観的にも和田らの報告より、精度の高いものであり「和田移植」の問題点を鋭く指摘したものとなっている。 結論としては「和田移植」は、ドナーとレシピエントに対する2重の傷害致死に相当するものであり、20世紀における人体実験(特に、生体実験に充分、該当するもの)である蓋然性にも言及した。

和田心臓移植事件

生体実験

違法性阻却

日弁連

医学史

identifier:RO000900009216

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