いわゆる「脳死・臓器移植」を超えて

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タイトル別名
  • イワユル ノウシ ゾウキ イショク オ コエテ
  • Farewell to Organ Transplantation at the Cost of “Brain-Dead” Patients

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抄録

臓器移植法改定以降,臓器移植の新たなかたちが展開しつつある。本稿では,医学哲学・医療倫理の視点から,特に下記の2点に限って,この事態の文化的解剖(アナトミー)を試みた。A)患者本人の意思が不確かな(書面で明示されていない)のに,その家族が推定だけで患者の死の判定作業に同意し臓器を供出することにはどのような問題が含まれているか。B)臓器移植法は「脳死状態」を人の死と見なして臓器の収穫を行なうが,その前提となる「脳死状態」の実態(リアリティ)は一般市民,特に家族に十分理解され納得された上でのことなのか。これらのどちらも患者の自己決定に抵触する問題点をはらんでいる。すなわち,A)には,今回の法改定が,臓器提供を家族の同意(意思決定)だけで患者を「死につながる脳死判定に持ち込み」,そのほとんどが臓器の摘出にいたらしめる点で,患者本人の基本的人権の侵害になる危険性がある。また,B)では,意思表示カードに「臓器提供」の意思を表示している人を含めた問題であるが,もし当事者が,自分では「脳死状態」について熟知せず実感(リアリティ)のないまま「臓器提供」に同意したのであれば,それは自由意志による同意だとは決して言えないと思われるから。これらを,脳死概念に関わる基本的問題に言及しつつ,考察した。

脳死状態

臓器移植法

自己決定

家族による代理決定

自律

identifier:FO000700001247

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