『呼蘭河伝』の構成

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  • コランカデン ノ コウセイ

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抄録

本稿の目的は、三十年代の作家である蕭紅の長編小説『呼蘭河伝』の構成からその作品世界を探るというものである。『呼蘭河伝』は、独立した章を並べ合わせたかのようなごく単純な構成を持つが、前半から後半へ、さらには一章ごとの手法の変化に着目すると、実際には非常に精緻で計算された構成である。一、二章は叙事的に町の風景、風俗を描いた文章である。三、四章は前章までの叙事的手法を受けつぎつつ、三人称描写から五章以降に共通の一人称描写に変わり、以降の章への橋渡し的役割を果たした。そして五章以降はそれぞれ短編小説として独立した形を取りながらも共通のモチーフが描かれている。さらに、作品全体を巨視的に眺めると、一貫して小説の遠景であるはずの作品舞台を主役とし、様々な手法、エピソードを用いてこれを描き出してきたことが判る。こうした技法によって、この小説の重層的で奥行きを持つ世界観は構築されている。

構成

呼蘭河伝

蕭紅

identifier:DO003100006368

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