製造業分野への応用 : 高速大容量通信による産業用ロボット制御の高度化

書誌事項

タイトル別名
  • セイゾウギョウ ブンヤ エ ノ オウヨウ : コウソク ダイ ヨウリョウ ツウシン ニ ヨル サンギョウヨウ ロボット セイギョ ノ コウドカ

この論文をさがす

抄録

高速大容量,低遅延の無線通信を実現する5G技術の実用化により,高精細映像伝送,大容量センサデータ転送,リアルタイム制御信号伝送等が可能になり,さまざまな領域において,新しいサービスの開発やこれまでにない機能が実現されると期待されている.その一つが製造業分野への適用による生産現場の高度化であり,5Gによる信頼性の高い無線通信がFA(Factory Automation)の進化を加速し,「つながる工場」(Connected Industries)を実現する重要な役割を果たすことになると考えられる.製造業分野における生産性の向上や省人化などを目的とした生産現場の高度化に向けて,産業用ロボットや自動機械の導入が模索されており,関連する高度な技術の開発や低価格化の取り組みが進められている.なかでも産業用ロボットは,正確かつ高速な動作が可能であることから,単純な繰り返し作業が必要な領域において利用されている.しかし,一般的な産業用ロボットの構成ではロボットとロボットを制御するコントローラおよび外部機器等の複数の装置が専用の通信線で接続されており,また,設置環境やロボットの動作内容に応じてプログラミング(教示,ティーチング)作業が必要であるため,設置から稼働までの作業工程が長く複雑になるという問題がある.少量多品種の生産が求められる現在の製造現場においては,生産ラインの組み替えや製造工程の変更が頻繁に必要になっており,産業用ロボットを含む各種機器を再配置して生産を開始するまでの生産準備時間をできる限り短縮するために,迅速な配置換えが可能な仕組みが求められている.そこで,製造現場における各種機器聞の通信を無線化することによって既存設備への新しい機器の導入,迅速なメンテナンスの実施,レイアウト変更時のリードタイム短縮を目指す取り組みが進んでおり,これまでに無線LANやISA100, IEEE802.ll ah等のさまざまな無線通信規格が検討されている.また,工場内部で使用する多様な無線通信システムを安定して使用するために,フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)によって、SRF無線プラットフォームなども提案されている.このような取り組みに加えて,高速大容量・低遅延・同時多接続を可能にする第5世代移動通信システム(5G)を工場における無線通信に利用する検討も始まっており6)-8),無線通信に対して比較的厳しい工場内の環境において,干渉が少なく,高品質な通信が実現できるものと期待されている.本稿では,5G無線通信を使用したFAシステムの実証モデルとして,産業用ロボットと3次元計測センサによって構成されるピックアンドプレースシステムを構築し,実際の製造現場である工場における28GHz帯の5G通信システムを用いた動作検証および、迅速な配置換えの実証を行った結果について報告する.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ