フィンランドにおける小規模企業課税の展開 : 二元的所得税下での所得転換問題

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  • フィンランド ニオケル ショウキボ キギョウ カゼイ ノ テンカイ : ニゲンテキ ショトクゼイカ デノ ショトク テンカン モンダイ
  • Developments of Small Business Taxation in Finland : Income Shifting Issues in the Dual Income Tax

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説明

フィンランドでは1993年の二元的所得税の導入にあたって,小規模企業による労働所得から資本所得への所得転換の問題に対して,企業純資産を資本所得の算定ベースとするsplit modelにより対応を図った。当初は,個人事業者と非上場法人オーナーにほぼ共通の仕組みであったが,企業形態間の中立性を高める観点から,両者は別個に扱われるようになった。その中で,特に非上場法人オーナーについては,事業資産と負債の操作に加えて,帰属収益率に合わせた配当支払いの調整が可能であったことから,所得転換への誘因が強く作用した。2005年には非上場株式を含む配当課税の大規模な改革が行われたものの,制度の複雑化などに起因する,なお強い所得調整への誘因が,法人の最適な投資行動を歪めていると懸念されている。同じく二元的所得税の下で,法人オーナーにかかる強い所得転換の問題に直面したノルウェーが,株式課税のより抜本的な改革を通じて,この難題に巧みに対応したのとは対照的に,フィンランドでは,依然として適正な運用に苦慮しながら制度の修正を重ねている実態がうかがわれる。

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