Ethnicity or Tribe? Social Cleavage in Omani Employment Patterns

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  • エスニシティか部族か -オマーン人の就業形態にみる社会的亀裂

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抄録

本稿は,中東,湾岸諸国で近年大きな社会問題となっている雇用問題をとりあげ,オマーン人の就業状況から国民内部の社会的亀裂を論じるものである。湾岸諸国の多くでは外国人が国民の人口を上回っており,劣悪な労働環境に置かれた外国人労働者の人権問題や,文化的他者あるいは脅威としての外国人の存在がとりあげられるなど,雇用問題や労働市場は国民/外国人の構図のなかでこれまで分析されてきた。しかし,自国民/外国人の格差への過度な注目は,一般国民内部の多様性や格差を隠蔽してしまう。そこで本稿では,1980年代以降政府が推進する労働力の自国民化を底辺で支えているのが,主流派のアラブ系オマーン人ではなく,非アラブ系やアフリカ帰りの混血オマーン人であることを筆者の参与観察やインタビュー資料から明らかにする。こうしたデータをみると国民内部の分業体制はエスニシティに基づいているようにみえるが,エスニシティと重なりながらも部族という要因が作用していることを論じる。近代化していく社会の中で薄れつつあると言われる部族意識は,1980年代以降顕著になってきた公的機関への就職難,さらには結婚相手の選択可能性という,自身の部族アイデンティティを改めて意識化する契機が生まれたことによって,現代的な意味合いをもった形で維持されているのである。

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