コロナ禍における在欧多国籍企業

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  • コロナカ ニオケル ザイオウ タコクセキ キギョウ
  • Multinational enterprises within Europe under Corona crisis

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抄録

本稿は,国際収支表とREDのデータを利用し,コロナ危機下の欧州における多国籍企業について検証,分析する。2020年直接投資フローは,受入,送出しともに停滞気味であったが,域内外では異なる様相を呈していた。投資収益は直接投資フロー以上の流れがあり,経済が落ち込む中でも在欧多国籍企業の事業継続を示すと同時に,その一部が再投資収益として直接投資フローのかなりの部分を占めていた。REDのデータにより,個別企業レベルでは雇用の削減と創出双方を含む活発な事業再編が行われていたことを確認した。その際,欧州系と非欧州系多国籍企業の対照が見られ,前者は雇用削減型に傾斜していた。以上の動向は,コロナ危機の影響だけでなく,より大きな流れに沿うものであった。即ち,2010年代後半からの世界的な直接投資低迷傾向,世界経済における欧州系多国籍企業の地盤沈下,ICTデジタル化と環境保護規制の高まりなどがあり,EUの政策展開も一定の影響を及ぼしていた。更に,コロナ危機に加速される形で進んでいる構造変化に対応するため必要となる研究開発投資が,EU企業では量的,質的な問題を抱えていることが,2020年の在欧多国籍企業の動向の背後にあることを明らかにした。

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