カレツキのマクロ経済学のミクロ的基礎 : 有効需要の原理

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タイトル別名
  • The Microfoundations for the Macroeconomics of Michał Kalecki
  • カレツキ ノ マクロ ケイザイガク ノ ミクロテキ キソ : ユウコウ ジュヨウ ノ ゲンリ

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説明

Kalecki(1938)の価格と分配の理論を展開する図には「需要曲線」が描かれていない。その「謎」は,Kalecki(1938)のもつ,「長期」と「短期」をつなぐ「連結環」としての性質により,初めて解明されうるものである。Kalecki(1938)の理論には,3つの「連結環」としての性質が備わっている。そのうち3つめの「期待」にかんする「連結環」により,「謎」が解明される。Kalecki(1933)の投資決意の分析では,決定的概念とされている「粗収益性」が,「長期期待」と「短期期待」の結びつきによって捉えられている。その場合,Kalecki(1933)においては,マクロ理論の「ミクロ的基礎」として,「長期期待」についての分析がなされているが,その一方で,「短期期待」についてのミクロ分析を示しているのが,Kalecki(1938)の図である。そこでは,不完全競争の下での個別企業が,独占度を反映させて価格設定をおこなう場合,「短期期待」にもとづいて,設備稼働率,すなわち,産出量は,決定されるという理論が展開されている。つまり,「需要曲線」が描かれていないという「謎」は,カレツキの経済学が,一貫して,有効需要の原理という理論枠組みの下で考察がなされているものであるということによって明らかにされる。そのような視点で捉えれば,Kalecki(1938)は,「マクロ理論のミクロ経済学的基礎」としての役割を果たしている一方で,「ミクロ経済学のマクロ的基礎」と呼ばれる性質をもつものなのである。

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