ルソー的視座から見た自由(経済的自由)と平等(生存権)のせめぎ合い : なぜル・シャプリエ法は1 世紀近くも失効しなかったのか

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  • The Conflict between Economic Liberty and Right to Life Seen from Rousseau’s Political Vision : Why Didn’t the Le Chapelier Law Expire for Nearly a Century?

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本稿はレヴェイヨン事件,ヴェルサイユ行進,エタンプ事件という3 つの生存をめぐる 民衆の直接行動とそれらの事件への為政者・中央権力の対応とを捕捉することを通して, フランス革命期の社会の矛盾・分断は何によってもたらされたのかを分析する。筆者はコ ルポラシオン(同業組合)を禁止して経済的自由を促進する1791年6 月制定のル・シャプ リエ法に着目する。本稿が射程に収めるのは,93年憲法の採択された1793年6 月までであ るが,萌芽的であるとはいえ生存権規定を含む93年憲法をなぜジャック・ルーは断罪した のか。91年憲法は失効したにもかかわらず,91年憲法体制を支えたル・シャプリエ法はな ぜ1 世紀近くも存続したのか。『人間不平等起原論』でルソーが行った富者主導の国家の カラクリの暴露と,『社会契約論』で真の人間解放論としてルソーが提示した,すべての associé の生存を確保する新国家の構想とを分析視座に据えた本稿の分析によって,ル・ シャプリエ法は「富者の正義」の法に他ならないこと,富者が中間団体否認論をルソーの 意図に反して「巧みな簒奪」に利用したことが明らかにされる。現代の私たちの最大の社 会課題は格差社会からの脱却にあろう。とすれば,この難問に挑むために私たちはルソー の残した政治構想を真剣に受け止める必要がある。

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