アイヌ語樺太方言における数詞と計算

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タイトル別名
  • Numerals and methods of calculation of the Sakhalin Ainu
  • アイヌゴ カラフト ホウゲン ニ オケル スウシ ト ケイサン

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説明

本稿は、19世紀後半から20世紀後半にかけて記録されたDobrotvorskij(1875)、山邊(1913)、Laufer(1917)、Naert(1961)、服部編(1964)を対象として、樺太方言の数表現について考察するものである。以上の資料から、10~19まではwanpeを基底数とした表現で固定されていること、kunkutu「十」、tanku「百」、wantanku「千」という十進法の基底数が用いられていることが確認できる。年代的に古く、情報量の多い「アイヌ語ロシア語辞典」(Dobrotvorskij 1875)には二十進法による数詞および計算も数多く見られる。この資料には、基底数としてhoh「20」、(sine)wano「200」、way(sine)wano「2,000」が確認できる。本稿で用いたどの資料でも10,000もしくは20,000を表す基底数は確認できないが、限られた基底数と係数(数連体詞)、足す数を組み合わせることで、基底数のない10,000もしくは20,000以上の数を表現することが可能である。『アイヌ語ロシア語辞典』では、20,000以上の数も、way(sine)wano「2,000」を含む数名詞(句)にそれを修飾する数連体詞を付加するか、数名詞(句)を並べる乗法を用いるかにより表現されている(山邊1913にも数連体詞を用いたhohne wantanku「二万」と、数名詞を並べたre kunkutu wantanku「三万」という例がある)。

収録刊行物

  • 北方人文研究

    北方人文研究 15 63-84, 2022-03-25

    北海道大学大学院文学研究院北方研究教育センター

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