ダンヌンツィオの文学作品における「新しいルネサンス」 : フィレンツェ・ルネサンスを通じた古代と中世の再生

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  • The ‘new Renaissance’ in D’Annunzio’s literary works : The revival of the ancient and medieval ages through the Florentine Renaissance

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抄録

本稿は,ルネサンス再評価の旗手と見なされるガブリエーレ・ダンヌンツィオが,初期から中期の文学作品において,フィレンツェ・ルネサンスを通じて古代と中世の文学的な世界を再生させることによって,独自の「新しいルネサンス」を目指していたことを明らかにするものである。 牧歌的な詩集『新しい歌』(1882)でダンヌンツィオは,人文主義的な伝統から離れ,肉体的な方法で古典古代を再生しようとする。耽美的な詩集『イゾッテーオ-キマイラ』(1890)において「新しいルネサンス」は,自然の生命力や恋の芽生えという文字通りの「再生」を包含していく。小説『快楽』(1889)には,文学が政治や社会に大きく関わっていたルネサンス期に対する憧憬が描かれる。その後,「新しいルネサンス」はナショナリズムを帯び,社会的・政治的な含意が濃くなる。自然と芸術を司る「子供」によって象徴される詩集『アルキュオネー』(1903)における,神話的な永遠の世界の表現が,ダンヌンツィオの「新しいルネサンス」の一つの完成形である。

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