韓国の徴兵制が徴兵経験者に与える影響 : 「男になる」という言葉を中心に

書誌事項

タイトル別名
  • The influence of South Korean conscription system on those who have experienced conscription : Focusing on the word "becoming a man"
  • カンコク ノ チョウヘイセイ ガ チョウヘイ ケイケンシャ ニ アタエル エイキョウ : 「 オトコ ニ ナル 」 ト イウ コトバ オ チュウシン ニ

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説明

本研究の目的は,徴兵の影響によって内面的変化を表す言説である,「男になる」という言説を中心に,徴兵経験者がこの意味についてどのように捉えており,また男性間でどのように共有しているかについて明らかにすることである。そのために,彼らの徴兵中の生活だけでなく,徴兵以前と以後の状況についても2 回にわたるインタビュー調査を行いその影響について分析した。 韓国は現在も北朝鮮と休戦状態であり,国防のために国民に徴兵の義務を課している。しかし,長年徴兵が国家に定着すると,徴兵に対し国家の安全保障のためという意味に,他の目的や意味合いが付与され派生するようになった。例えば,「徴兵を終えたこと=成熟した,頼もしい」,「徴兵を終えていないこと=未熟」のような男性個人を評価するような価値観が社会に定着するようになったのである。その中でも,代表的な「軍隊に行くと男になる」という言説は,韓国社会が規定する男性性の表れであり,長い間韓国国民に受け入れ使用されてきた言葉である。しかし,「男になる」に代表される徴兵をめぐる言説の意味については既存研究では言及されてこなかったのである。例えば,「男」とはどのようなものか,またそれは韓国人男性間でどのような意味で共有されているのか等である。 本文では,「男になる」の他に,インタビュー中に頻出した「大人になる」や「責任感がつく」という言葉についても,「男になる」という言葉との関連性を鑑み調査対象とした。その結果,「男になる」の「男」について,個人が様々な解釈を持っているものの,男性同士で共有されている意味は存在しなかった。また,「男になる」と「大人になる」は同義の意味であり,「責任感がつく」に関しては,軍事化された男性性と関連性があることが明らかとなった。

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