正中二分割Le Fort I型骨切り術併用による上下顎同時移動術を施行した骨格性下顎前突症の1例

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タイトル別名
  • A case of skeletal mandibular protrusion treated by Le Fort Ⅰ osteotomy with median palatine suture splitting and sagittal split ramus osteotomy
  • 二分割Le Fort I型骨切り術併用による上下顎移動術を行った骨格性下顎前突症例

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抄録

骨格性下顎前突症は,その改善に上下顎移動術が適用される場合があり,とりわけ上下顎歯列弓幅径の著しい不調和が認められる症例では,上顎骨に対する分割骨切り術の併用が必要となる.今回,我々は上顎歯列弓の狭窄を伴う骨格性下顎前突症例に対し,二分割Le Fort I型骨切り術と下顎枝矢状分割術(SSRO)を併用した外科的矯正歯科治療を施行し,良好な結果を得たので報告する. 初診時年齢42歳の女性で,受け口を主訴として来院した.現病歴としてシェーグレン症候群に起因する唾液分泌量低下を示した.口腔内所見としてoverjetは-3.5mm,overbiteは+4.3mmで,右側第一小臼歯から左側犬歯にかけて反対咬合が,両側第一大臼歯部には交叉咬合がそれぞれ認められた.正貌はオトガイの左方偏位と咬合平面の左上がりを呈し,側貌はstraight typeであった.側面頭部エックス線規格写真分析の結果,∠ANBは-0.3°と下顎骨の前方位を認め,FMAは37.6°とhigh mandibular plane angleであることから,本症例は上下顎歯列弓幅径の不調和と左上がりの咬合平面傾斜を伴う骨格性下顎前突症と診断された.17か月の術前矯正治療後,二分割Le Fort I型骨切り術とSSROを併用した顎矯正手術を施行した.通法によりLe Fort I型骨切りを行い,正中にて上顎を分割し両骨片間を臼歯部で4.0mm開大させ,上顎正中を顔面正中に一致させ口蓋床にて固定した.下顎はSSROにて右側6.5mm,左側5.0mmの後方移動を行いチタンプレートにて固定した.顎間固定終了後,術後矯正治療により緊密な咬合が獲得されたため,保定へ移行した.上下顎歯列弓幅径の不調和は改善され,良好な咬合関係が確立された.以上より,上顎二分割Le Fort I型骨切り術を併用した上下顎同時移動術は上下顎歯列弓幅径の調和を図る際の歯の移動を最小限に抑え,正中二分割を行わない場合と比較して,治療期間を短縮する上でも有用であることが示唆された.

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