「2001年の大リストラ」はなぜ発生したのか?

書誌事項

タイトル別名
  • Why did the “Large-scale Restructuring of 2001” occur?

説明

本稿の目的は,後藤道夫氏のいう「2001年の大リストラ」が発生した原因を明らかにすることにある。後藤氏はその原因を同年に発足した小泉内閣による不良債権処理および経団連が同年に発表したとされる「長期雇用慣行の解体」の方針に求めている。しかし,それは本当の原因ではない。本当の原因は投資家への情報公開を目的とした一連の「国際会計基準」の導入である。「連結決算」「連結キャッシュフロー会計」「年金会計の公開」「金融資産の時価評価」「持ち合い株式の時価評価」「連結納税制度」といった一連の国際会計基準が立て続けに導入された時期に大規模な正規雇用の削減が実施されている。連結決算の導入に伴って,中高年層を子会社や関連会社に転籍させることによる本社組織のスリム化が不可能となり,常に黒字決算が要求され,企業が将来負担する退職給付の債務の開示と金融資産の原価評価から時価評価への変更による評価損益への計上が義務づけられることになった。持ち合い株式の時価評価によって発生する含み損益は資本勘定の増減要因となり,関連会社や子会社も含めた連結納税制度が導入された。こうした「国際会計基準」の導入による株主資本主義への転換は「雇用の流動化」を促し,いわゆる日本的雇用慣行に壊滅的な打撃を与えた。2000年前後に発生した正規雇用の大規模な削減の理由はこの点に求めることができる。

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