地方分権改革以後の生活保護行政における地方自治体のジレンマ : 別府市の遊技場立入調査を事例に

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タイトル別名
  • The dilemma of local governments in public assistance administration after decentralization reform : A case study of Beppu municipal government's on-site inspection of amusement facilities.
  • チホウ ブンケン カイカク イゴ ノ セイカツ ホゴ ギョウセイ ニ オケル チホウ ジチタイ ノ ジレンマ : ベップシ ノ ユウギジョウ タチイリ チョウサ オ ジレイ ニ

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抄録

地方自治体は国の方針と異なる対応をすることがある。生活保護行政においては地方自治体職員の裁量が大きいことから,国や県との間で制度解釈に不整合が生じることが多い。本稿では,国の見解と異なる行政活動を地方自治体が実施した事例として,別府市の遊技場立入調査に着目する。 大分県別府市では生活保護受給者に対して,パチンコや競輪場といった遊技場立入調査を行っていた。しかし,この行政活動が不適切であると,国から指摘があった。そのため,別府市は従来の方針の変更を迫られることになった。 地方分権改革以前は国がコントロールすることによって,国と自治体間で生じる制度解釈の不整合を調整していた。しかし,地方分権改革後は,機関委任事務制度や通達行政の廃止によって,国から自治体への直接的なコントロールはできなくなったとされており,国と自治体の関係性も変化したとされている。では,地方自治体と国との間で制度解釈に不整合が生じた場合,どのように調整するのだろうか。 本稿では以上の問題関心から,地方分権改革以後の制度の解釈をめぐって,国と県及び市町村が制度解釈の不整合をどのように調整するようになったのか,そこには,どのような問題が孕まれているのかを検討する。地方分権改革以前は,国がコントロールにより制度解釈の調整を行った。しかし,国と県及び市町村の関係性が対等・協力関係に変化したとされている昨今においても,国の制度解釈に県と市が合わせることで整合性を図っている。本稿で取り上げる別府市の事例から,地方分権改革以後の国による形を変えたコントロールが存在することにより,地方自治体は国だけではなく,地域住民との間にもジレンマを有することを明らかにする。

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