評価規約の規定要因 : 米山学説 (6)

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タイトル別名
  • ヒョウカ キヤク ノ キテイ ヨウイン : ヨネヤマ ガクセツ (6)
  • Hyōka kiyaku no kitei yōin : Yoneyama gakusetsu (6)
  • Valuation rule and two conceptual views of earnings : case of Yoneyama theory (6)

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抄録

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前号では,計算方式の属性の側面,および計算方式の計算目的の側面から,配分・評価分類の問題点を検討したので,今号では,評価カテゴリーが分離・独立化した理由を俎上に載せることにする。すなわち,いわゆる取得原価主義会計論においては,配分カテゴリーしか存在しなかったのに,現代会計理論は,売買目的有価証券の時価評価を認めるべく,評価カテゴリーを独立化したのであった。したがって,その根拠が問われなければならない。この点については,一般的には,信頼性と目的適合性とのトレード・オフ関係を大前提にして,今日,社会の関心が,信頼性重視から目的適合性重視へと移ったことに,その原因が求められているようである。米山学説も,そのような理解にたっているようである。しかし,問題は,そうした理解の妥当性であり,筆者は,その点に疑念を覚えている。そうした視点から,評価カテゴリーの独立化の根拠を検討する。 ところで,米山学説は,配分と「配分と融合した評価」という分類を形成した段階で,評価手続につき,「配分の手続 (期間損益の意味を重視した測定操作) と対立するものではなく,むしろ場合によっては,配分手続の一形態と位置づけられることとなる」 (米山[2003]209ページ) と述べている。このように,評価手続が,配分手続の一形態ともなると,評価手続と配分手続との共通性および相違性とが審らかにされなければならない。 しかし,この点については,まったく言及されていないが,この点は,会計の全体像を描くうえで,きわめて重要な問題である。そこで,ここでは,補論において,私見を展開することとしたい。ただし,私見では,割引債等の金銭債権は,機械・製品等の配分資産にではなく,売買目的有価証券等の評価資産に帰属している。したがって,ここでは,機械・製品等と割引債等および売買目的有価証券との二項対立を前提にして議論を展開する。 その場合,その二項対立には,共に,全体損益額の配分ではあるにしても,機械・製品等は,費用と収益との差額をもって損益額とする二面的損益計算形態,他方の割引債等および売買目的有価証券は,期末ストック額と期首ストック額との差額をもって損益額とする一面的損益計算形態という相違点が存在するのである。他方,二面的損益計算形態における費用と,一面的損益計算形態における期首ストック額とは投下資本額を,他方,二面的損益計算形態における収益と,一面的損益計算形態における期末ストック額とは回収資本額を意味している。したがって,その形態は異なっているにしても,機械・製品等と割引債等・売買目的有価証券とは,共に,投下資本回収計算という共通の性格を具えていると言ってよいと筆者は考えている。

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