手指形状認識による画像認証手法のイントラネットへの応用

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  • 認証

抄録

従来のパスワード認証では,英数桁の数字や記号を用いて認証を行うのが一般的である.しかし,偽造,盗難が容易であり,漏洩など安全性に疑問がある.対策として,インターネット上ではリモートアクセスなら鍵認証,ブラウザアクセスなら証明書での認証などがあるように,現実でも同じように所持物による認証がある.しかし、所持物による認証方法は、その所持物を本人が持っていることが前提であるため,紛失時の本人拒否,盗難時の他人受容などが問題である.これらの解決策として近年実用化され,銀行やATMなどでの個人認証や,入退室管理などに利用されているのがバイオメトリクス認証である.バイオメトリクス認証において重要なのは利用者への負担の軽減と利便性の向上である.利用者への負担には心理的負担と,身体的負担の二つがある.心理的負担とは指紋や虹彩など身体の情報を読み取られることへの抵抗感であり,身体的負担とは普段行わないような動作を強いられることへの抵抗感である.利用者への負担の軽減と利便性はトレードオフの関係で両立させるのは困難であり,両立できたとしても設備費用が莫大になってしまうのが現状である.例として,虹彩認証では30万円,顔認証では100万円程度の費用が掛かる.そこで,低予算で構築可能であり利用者への負担の少ない認証方法として,キーボード上に置かれた手指形状により個人を特定する方法を提案する.固定したキーボードの真上からカメラで手指形状を撮影し,特徴点を抽出することで個人の特定を可能とする.提案手法はWebカメラがあれば認証が可能であるため,導入費用が数千円程度であり,低コストで導入できるという利点がある.キーボードに手を置くという日常的な動作のため,心理的負担,身体的負担共に少ないと考えられる.Webカメラは固定されているため,利用者がキーボードに手を置く位置や手の角度が変わると計測する距離も変化する.そのため手を置く場所をホームポジションに指定している.本研究では,手指形状より得た特徴点情報を利用し,トーラス型自己組織化マップを用いて個人の認証を行う.各利用者の手指形状の特徴点間距離を属性ベクトルとして自己組織化マップを作成する.あらかじめ学習された本人ノードが配置されている自己組織化マップに,認証用画像から計測した特徴点間距離を属性ベクトルとして投入する.学習済みノードと投入された認証用ノードのユークリッド距離の平均を求め,認証を行う.投入する認証用ノードとは,学習済みのマップに新たな入力ノードを加えることで正しく分類がなされているかを確認するためのものである.実験の結果から認証成功率は89.9%となった.その後,実験での被験者から抽出した特徴点に対して主成分分析を行い,その結果から特徴点の削減を行った.主成分分析によって評価された指標のうち多くの変動を説明できる指標のみを,属性ベクトルとして自己組織化マップに投入した.投入する特徴点データを第6主成分まで,第7主成分まで,8主成分までに変化させ,それぞれで自己組織化マップを作成し,特徴点削減前の誤認識率と比較した.自己組織化マップは初期値が乱数を利用して決定されるため,作成するたびに毎回異なるマップとなる.そのため主成分の数を変える毎に10枚の自己組織化マップを作成し,その平均の誤認識率を比較した.主成分分析によって評価された成分のうち,データの変動を多く説明することのできる成分の上位7つを用いて識別を行うことで,最も誤認識率が低下することが分かった.7つの主成分を入力ベクトルとして自己組織化マップを120回作成し,平均の区間推定を行った.その結果,99%信頼区間で誤認識率はほぼ4.4%であった.以上の結果を踏まえ,本稿ではサンプル数を増加させ,より一般化された特徴点の決定と,サンプルの分析を行う.本研究の認証技術を導入するケースには,会社や学校などで利用されるイントラネットを考えている.決済システム,社内LANなどでは,セキュリティ向上を目的としたバイオメトリクス認証技術が導入されてきている.セキュリティ向上以外のメリットとして,確実に本人が使用したことを証明できるということが挙げられる.想定される環境では作業用デスクがあり,ある程度のスペースが確保されていると考えられる.そのため,本認証方法で使用するセンサデバイスの設置スペースは十分あると思われる.システムの利用者はATMのように不特定多数ではなく,ある程度限定されると考えられる.一つのPCを複数のユーザが使用すると仮定しても十数人程度が限度であり,本認証方法での識別は可能と考えられる.認証に必要な生体情報テンプレートはサーバ側が管理し,認証処理は負荷分散のため,クライアント側で行うことを想定している.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1050292572120530304
  • NII論文ID
    170000068653
  • Web Site
    http://id.nii.ac.jp/1001/00079725/
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    conference paper
  • データソース種別
    • IRDB
    • CiNii Articles

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