複製時代の小説 : ジャック・ロンドンの『海の狼』

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  • フクセイ ジダイ ノ ショウセツ ジャック ロンドン ノ ウミ ノ オオカミ

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「そこらを彷徨きまわって、インスピレーションなんかを待ってたんじゃいけない。棍棒でもってそいつを捕まえるんだ。たとえ捕まらなかったとしても、それに実によく似たものは手に入るはずだから」『野性の呼び声』(以下『呼び声』。1903)のバックが苦痛に耐えながら修得する「棍棒の掟」を彷彿とさせるこの一節をジャック・ロンドンが書いたのは、『呼び声』執筆の直後、1903年2月のことである。ロンドンの創作への姿勢、というより創作行為に対してとったポーズ、彼の作品の魅力、文体の強さと「男らしさ」がいかんなく発揮された、キャッチ・コピーのような一節だ。「出版にこぎ着ける」というエッセイのタイトルのとおり、これは、ロンドンが、どのようにして手書きの原稿をプリントされた印刷物にまでもっていくのか、どうやったら職業作家になれるのかを、文筆を志す者たちに指南するという体裁で発表したエッセイの一節だ。

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