『通俗民権百家伝』の周辺 -初期自由民権運動の一断片-

書誌事項

タイトル別名
  • 『 ツウゾクミンケン ヒャッカデン 』 ノ シュウヘン : ショキ ジユウミンケン ウンドウ ノ イチ ダンペン

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説明

私はこれまで、萩原乙彦(文政九年―明治一九年〈一八二六―一八八六〉)について何編かの論考を書き、資料紹介もわずかばかり行ってきた。その中でちょっとした違和感を感じていた著作が、『通俗民権百家伝』全三編(明治一一―一四年刊〈一八七八―八一〉)である。乙彦は旗本次男坊で、ある程度の学問と先見の明を持ち、一時は文名も上がったが、時代の波に翻弄され、ついには山梨の山村にひっそり朽ち果てた。維新の動乱の中で、趣味と放蕩に人生を茶にしてしまった幕末武士の一典型とも言える。そのため、『通俗民権百家伝』と乙彦という組み合わせはどうにもしっくりこないのである。しかし、思想性や政治性はともかくとしても、乙彦にはジャーナリストあるいはエディターとしての才能があった。乙彦のそのような分野の仕事として見た場合、『通俗民権百家伝』があることは理解できないわけでもない。乙彦は器用仕事(ブリコラージュ)の達人だったのである。

収録刊行物

  • 文芸研究

    文芸研究 130 41-63, 2016-09-29

    明治大学文学部文芸研究会

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