1970~2020年におけるわが国の林業労働災害の分析

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  • Occupational accidents in Japanese forestry, 1970-2020

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抄録

著者は山林で働く労働者にとって災害の少ない安全な仕事であることが最も基本的な労働環境と考えている。そこで,これまでの林業における労働災害の推移・状況を確認しながら,わが国における林業労働災害の状況を明確にしつつ,今後の災害防止にあたっての考え方・方向性を提起することを本研究の目的として,過去50年にわたるわが国の林業労働災害の分析を行った。本研究では林業での災害による死傷者数・死亡者数の推移,災害に関する産業間比較,作業種別災害,災害と労働者の属性について分析を行った。その結果,林業での災害による死傷者数は長いスパンでみると減少していることが示され,この減少は素材生産や植栽・下刈・間伐等の林業生産活動の低下に伴う労働力の減少に起因していることが確認された。死傷年千人率を使って他産業間の災害発生比較を行った。1987年以降,本指標は林業が他産業に比較して最も高い値を示しながら今日まで推移していることが示された。2019年(令和元年)の死傷年千人率は林業:20.8であり全産業平均の約9.5倍に相当した。作業種別災害では,伐木において災害が最も多く発生していること,重篤な事故が多く発生していることが示された。伐採搬出に関する諸作業においては,プロセッサ,ハーベスタ等の大型で高度な機械化の活用が災害の減少につながっていることが推察された。災害と労働者の属性については,60歳以上の高年齢層での災害発生数が多かった。年齢階ごとの労働力を加味すると,19歳以下の若年齢層において被災する確率が高いことが示された。

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