カラマツ幼齢人工林における野ネズミ低密度変動時の被害の現状とエゾシカによる幹食害について

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タイトル別名
  • Damage to young larch trees by sika deer and voles at low population density
  • カラマツヨウレイジンコウリン ニ オケル ノネズミ テイミツド ヘンドウジ ノ ヒガイ ノ ゲンジョウ ト エゾシカ ニ ヨル カン ショクガイ ニ ツイテ

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抄録

近年,野ねずみ※発生予察調査におけるエゾヤチネズミ捕獲数は年変動が小さくなり,比較的少ない数で推移しているが,野ネズミによる被害面積は減少していない。このような捕獲数と被害の乖離について検討するため,継続して被害が報告されている厚真町の3~8年生カラマツ人工林において獣害の発生状況を調査し,正確な識別につながる被害形態の違い,被害報告との関係等について検討した。解析対象とした18~19林分において林分の野ネズミ被害率は4.3%,シカ幹食害率は22.9%とシカ幹食害が多かった。捕獲数と被害の乖離の原因の1つとして,シカ幹食害を野ネズミ被害として誤判定している可能性が次の3つの理由から考えられた。その3つとは,(1) 本調査を行った者が調査初期にシカ幹食害を野ネズミ被害として間違えたこと,(2) 聞き取りから,被害報告を提出する者が誤判定している可能性があると考えられたこと,(3) 野ネズミ被害が報告されている3林分において,野ネズミ被害が確認できずにシカ幹食害のみ確認できたことである。一方で,シカ幹食害率は野ネズミ被害報告指数と関連がなく,捕獲数と被害の乖離の原因には,誤判定以外の要因もあると考えられた。野ネズミ被害率は,被害報告との明らかな関係はなかったが,シカ幹食害を野ネズミ被害として報告していた可能性のある3林分を除外して解析したところ,野ネズミ被害率と被害報告指数は明らかな正の関係が認められた。野ネズミ被害率は林齢とともに増加し,被害が累積していることが推測された。被害形態の違いを検討したところ野ネズミ被害は地際に多く,シカ幹食害は地際に少ないことである程度識別が可能であることが示唆された。シカ幹食害率は,狩猟者1人1日当たりの目撃数(SPUE)との関連が得られず,調査地域内のSPUEの範囲が3.49~4.89と小さいことが原因と考えられた。

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