エゾシカハンターの意識と行動の分析 : 獣害対策と食肉化の視点

書誌事項

タイトル別名
  • An analysis of the attitudes and behavior of Ezo deer hunters : Perspectives on animal damage management and utilization
  • エゾシカハンター ノ イシキ ト コウドウ ノ ブンセキ : ジュウガイ タイサク ト ショクニクカ ノ シテン

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抄録

本研究の目的は,如何にして有害捕獲と食肉化を両立して進められるか,その方策を検討することであり,(1)どのような有害捕獲制度の下でハンターが捕獲を行っているか,(2)捕獲奨励金と食肉処理業者による買い取りがハンターの意識と行動にどのように関連しているかを明らかにすることを課題としている。分析対象は北海道日高地域のエゾシカであり,行政機関,食肉処理業者Aやハンターへの聞き取り調査を実施した。まず,日高地域においては,1年間のうちほとんどが有害捕獲期間となっており,この期間中にエゾシカを捕獲したハンターは捕獲奨励金を受け取ることが可能になっていた。また,食肉処理業者Aが食肉用エゾシカの買い取りを行っており,A社の登録ハンターとなることで,ハンターは捕獲奨励金に加えA社による買い取り金を受け取ることができ,買い取りを受けない場合に比べ,より多くの金額を受け取ることができるようになっていた。次に,ハンターの意識と行動を分析した結果,捕獲奨励金単体でもハンターに捕獲インセンティブを与えるが,捕獲奨励金及び食肉処理業者による買い取りの両方があることにより,もともと趣味であった出猟が収入源としての出猟に変化し,趣味が(セミ)プロ化していることが明らかになった。このような(セミ)プロ化したハンターが,有害捕獲として捕獲「量」を増やしつつ,食肉化に必要な「質」を伴う捕獲も推し進めている。したがって,有害捕獲と食肉化を関連させ,双方を推進していくためには,ハンターの捕獲行動に経済的インセンティブを付与することが重要となるが,それには行政による捕獲制度や捕獲奨励金の整備だけでなく,捕獲後の処分先であり,且つ,食肉として買い取りが可能な食肉処理場の整備と支援もまた重要であると結論づけた。

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