D.W. ウィニコットの情緒発達理論に関する一考察 一保育における養護との関連に着目して一

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タイトル別名
  • A Study of the Theory of Emotional Development by Winnicott, D.W. -Focusing on the Relationship with Nursing Care in Childcare-
  • D.W.ウィニコット ノ ジョウチョ ハッタツ リロン ニ カンスル イチ コウサツ : ホイク ニ オケル ヨウゴ ト ノ カンレン ニ チャクモク シテ

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抄録

本稿では、保育所保育指針に示されている養護における保育者の関わりについて理解を深めるため、D.W. ウィニコットの情緒発達理論に関する論文を3編取り上げ、検討を試みた。ウィニコットは、子どもと母親の関係性の視点による情緒発達や治療論について有用な論考を残している。最初に取り上げた論文 「精神病と子どもの世話(1952)」は、環境としての母親が乳児のニーズに積極的に適応することで、乳児は自己感覚 sense of self を失うことなく主体性を発揮できる一方、環境が誤った適応をすると侵襲 impingement となり、将来の精神病性不安につながる可能性があると示唆している。次の「親と幼児の関係に関する理論 (1960)」という論文では、ウィニコット理論の重要な概念である「抱っこ holding」について論じられており、抱っこの目的は環境からの侵襲を最小限にして破滅 Annihilation を防ぐことであるとしている。 最後の論文 「小児発達における母親と家族の鏡としての役割 (1967)」は、乳児が母親の表情を見る時、そこに自分自身の気分や表情を見ているのであるが、母親が乳児の鏡になれない時、乳児は母親自身の顔を見ることになり、母親の顔色を伺う能力を習得してしまうと述べている。いずれの論文も、人的環境である保育者の援助や関わりを考える上で示唆に富むものである。

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