各務支考『つれづれの讃』続考

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『つれづれの讃』は、各務支考(一六六五〜一七三一)による『徒然草』の全段にわ たる評論書である。宝永八年(一七一一)の自跋を持つ。  『つれづれの讃』を評論書と呼称するのは、支考が『徒然草』を 内容のまとまりに注 目して、大きく四十九の段に区切り直し、それぞれに漢字四字で題名を付けているこ と、および、諷詞・褒貶・断絶・虚実・変化など、十三種の分析批評用語を駆使して、 『徒然草』の内容を批評していることが、江戸時代に書かれた他の多くの『徒然草』注 釈書には見られない独自性を有するからである。  拙稿「各務支考『つれづれの讃』にみる『徒然草』の新しい読み方」(『放送大学研究 年報』第三十九号、二〇二一年)では、『つれづれの讃』の首巻に書かれている分析批 評用語、『徒然草』の基本事項である大綱、および、支考による兼好伝資料の集成を取 り上げて、支考の批評態度の特徴を論じた。けれども、首巻に続く全八巻からなる、支 考の全段解釈と批評を概観するところまではできなかった。本稿では、「各務支考『つ れづれの讃』続考」と題して、改めて支考の『徒然草』観を把握する。  支考の『つれつれの讃』は、全体を通して、章段間の繫がり方や、個々の文章の展開 に注目するという特徴が見られる。そのことは、『徒然草』を通して、文章展開や、自 分自身の考えの表明の仕方、話題の転じ方などを具体的に読み取るという新しい読み方 の発見にとどまらず、散文の書き方の様式化、すなわち、和歌や俳諧のような定型韻文 ではない、不定型の散文をどのように書くかという、文章法の提示への階梯となった。 そのことは、支考の先師たる芭蕉の遺志としての俳文の隆盛を企図するものでもあっ た。後に『本朝文鑑』(一七一八年)や『和漢文操』(一七二七年)などの俳文撰集をま とめた、支考の文学世界における『徒然草』の役割は、大きいものであった。

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