漢語動詞「奏す」成立考 ―漢語動詞形成漢字「奏」の意味変化―
抄録
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本論文は、漢語動詞「奏す」の成立過程について、中国文献の動詞「奏」字の意味と比較しながら論じたものである。日本の上代文献である『古事記』『日本書紀』の動詞「奏」字の意味は、皇后をも対象とするという点で、『史記』などの中国文献の 意味とほぼ一致する。これに対して、中古の古記録などの漢字表記文献では、動詞「奏」字の対象が天皇や院に限定される。 『源氏物語』の「奏す」の意味もこれと同じである。日本における動詞「奏」字の意味変化には 、公式令で、動詞「奏」字や動詞「啓」字の使用が、それぞれ天皇や皇太子・三后に限定されたことが関わっていると考える。訓点資料では、動詞「奏」字 をほぼすべて漢語動詞で読む。ここに動詞「奏」字と漢語動詞の結びつきの強さを見ることができる。筆者は、動詞「奏」字の意味変化を、漢語の和語化の一例と考える。
収録刊行物
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- 広島女学院大学人文学部紀要
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広島女学院大学人文学部紀要 (3), 1(44)-19(26), 2022-02-25
広島女学院大学人文学部
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050295834377487360
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- Web Site
- https://hju.repo.nii.ac.jp/records/9
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB