探究型空間図形カリキュラムの構成原理の視点による中学校数学科における生徒の空間的思考力の様相

書誌事項

タイトル別名
  • タンキュウガタ クウカン ズケイ カリキュラム ノ コウセイ ゲンリ ノ シテン ニヨル チュウガッコウ スウガクカ ニオケル セイト ノ クウカンテキ シコウリョク ノ ヨウソウ
  • Students' Spatial Skills for the Junior High School Mathematics from the Perspective of the Principles for Constructing Inquiry-Based Spatial Geometry Curriculum

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抄録

本研究の目的は第一に,中学校数学科における空間図形の探究において,空間的思考力の特に「三次元図形,二次元表現,言語・記号間,及び二次元表現内を行き来する能力」と「論理的推論」に関して,生徒が何を契機にしてどのようにそれらを発現するのか(しないのか)を実証的に明らかにすることである.第二に,それらの生徒の様相に関連した実践上・指導上の課題を明らかにすることである.これに伴い,リサーチ・クエッションを3点設定する.(1) 探究を通して生徒が空間的思考力の「三次元図形,二次元表現,言語・記号間,及び二次元表現内を行き来する能力」と「論理的推論」を発現できるか?またその様相はどのようか?(2) それらの能力を発現する際の契機は何か?(3) 生徒の学習の様相から言える指導上あるいは実践上の課題は何か? 本研究においては,探究型空間図形カリキュラムの構成原理を概念的枠組みとして採用した.このカリキュラム構成原理は4つあり,そのうちの1つである空間的思考力に特に注目した.空間的思考力の構成要素である「三次元図形,二次元表現,言語・記号間,及び二次元表現内を行き来する能力」と「論理的推論」の育成を視野に入れて,探究を構想した.研究の方法としては,教授実験を採用した.私立大学と私立中学校の連携プログラムにおいて,理工学部の教職課程を履修する学生(第一著者)が探究を主導した.教授実験に参加した第1学年4名と第2学年2名の計6名の生徒が本研究の調査対象者である. 探究の課題は決められた正方形の用紙やアクリル板を用いて,最大容積となる空間図形の展開図をかき,実際に空間図形を作成することである.分析では生徒の記述,授業における記録,動画等を使用して,生徒の学習の過程を記述する質的分析法を採用した. 本稿のリサーチ・クエッションに対応づけた結論は, (1)については特に立方体や直方体,三角柱などの複数の空間図形について全員が「三次元図形,二次元表現,言語・記号間及び二次元表現内を行き来する能力」を行使していることが観察された.しかしながら,円柱や六角柱に関しては三次元図形と二次元表現の間の変換において課題が見られた.「論理的推論」に関わる空間的思考力は全員には観察されなかったが,2名の生徒の探究にそれらが発現している様相が確認された.特に,第2学年の生徒が論理的推論を行っており,授業計画時に筆者らが想定していた能力以上の様相が,第2学年の生徒の学習過程において観察された.(2)に関して,(1)における一連の能力が発現した契機となったのは,展開図をかかせることであった.先行研究で述べられていた実測や実験的な試み,ここでは試行錯誤による展開図の作成が(1)の能力発現の直接的な契機となっていることが明らかになった.(3)に関しては,探究の難しさ,既習事項と探究との兼ね合い,空間図形のカリキュラムの系統性との関わりを指摘した.

収録刊行物

  • 科学/人間

    科学/人間 52 123-141, 2023-03

    関東学院大学理工学部建築・環境学部教養学会

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