地球温暖化対策税の引き上げと炭素配当の導入が家計に与える影響 : 2015年「産業連関表」と「家計調査」を用いた分析

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タイトル別名
  • Effects of the Increase in Global Warming Countermeasure Taxes and the Introduction of Carbon Dividends on Household Budgets in Japan : Analysis Using the 2015 Input-Output Table and Family Income and Expenditure Survey

抄録

脱炭素社会への手段として、二酸化炭素による社会的費用を内部化するカーボンプライシング(CP)が挙げられる。高いCPは価格メカニズムを通じ、経済主体の行動を変容させ、二酸化炭素の排出削減に結び付くと考えられる。一方で、燃料や電力は生活必需品であるため、CPには逆進性がある。つまり脱炭素社会の実現と公平な所得分配の間にはジレンマが生じている。本稿が分析を行う炭素配当は、CPによる税収をそのまま全市民に平等に分配する政策である。低所得者は所得に占める消費の割合が大きく、従ってCPが所得に占める割合は高いものの、消費額そのものは少ない。したがって、炭素配当を実施することにより所得格差が縮小すると予想される。本稿では、2015年の総務省「産業連関表」および「家計調査」を用いて、現在実施されている地球温暖化対策税を大幅に引き上げた場合の効果を推計した。その結果、所得が上昇するに従い、CPの負担額も上昇する傾向にあるが、支出額に占めるCPの割合は低下する傾向にあった。さらに、炭素配当を実施した場合、CPとの差額は所得が少ないほど高くなる傾向にあり、所得再分配効果が確認できた。また、所得階層の第6十分位までは差額がプラスの値になっており、CPと炭素配当の政策パッケージの実施は6割の世帯に経済的な利益をもたらすことも分かった。

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