信託と遺留分制度

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タイトル別名
  • La fiducie et la réserve héréditaire
  • シンタク ト イリュウ ブン セイド

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抄録

自己の死後、心身の障害、高齢等のために稼働能力がない子や配偶者の扶養を目的とする信託の利用が広がりつつある。しかし、民法外の財産分配・承継制度ともいえる信託と相続法の公序、とりわけ遺留分制度との関係は必ずしも明らかではない。そこで本稿では、従来の議論及び二〇一八年相続法改正における遺留分制度の弱体化をふまえて検討を行い、次の点を確認ないし主張する。第一に、信託も遺留分制度の規律に服する。これを前提として第二に、遺留分を算定するための財産の価額に算入されるのは、信託財産の価額ではなく受益権の価額と解すべきである。第三に、算入される信託の範囲及び遺留分侵害額負担の順位は、遺言信託については遺贈と同様に扱う一方、遺言代用信託については、様々な内容のものがありうることに鑑み、一律に死因贈与として扱う多数説には与しない。受益者の期待権、委託者の信託に対するコントロール権限の有無等を考慮して、個別具体的に判断すべきである。一例として、一般的な遺言代用信託について遺贈に準じて扱うことを提案し、その具体的な解釈方法を示した上で、今後の課題の一端について触れる。

収録刊行物

  • 法学新報

    法学新報 127 (3-4), 423-448, 2021-02-19

    法学新報編集委員会

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