集団における向社会的行動の促進に向けた責任分散低減を伴う説得技術の検証

抄録

近年,相手のためを思いやって行う行動である向社会的行動への注目が高まっている.向社会的行動の促進に関する既存研究ではしばしば誘引や説得による個人への介入が行われているが,向社会的行動はより多くの人が取り組むことが重要であるため効率的な集団への介入手法が必要である.しかし,集団特有の心理学的現象として自分以外の他者の存在により行動の責任が分散され個人が率先して行動を起こさなくなる責任分散の発生が知られており,従来研究での個人に対する介入手法が十分に有効ではない.そこで本研究では集団の向社会的行動促進において責任分散を低減するため,集団からの感謝フィードバックを促進する介入手法を提案する.本手法の有効性を検証するため,大学の研究室に所属する学生・教員 28 名の研究室内のゴミ出しを対象行動として誘引,説得に加えて感謝フィードバック促進介入を用いた 6 週間の行動促進実験を行い,アンケートによって被験者の心理状態と態度を測定した.実験結果より感謝フィードバック促進介入は実験の長期化とともに上昇する責任分散を低下させ,ゴミ出し行動に対する態度低下の抑制に有効であった.本手法を活用することでより効果的な集団の行動変容を実現できる可能性がある.

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