政治学教育とプロブレム・ベースド・ラーニング

書誌事項

タイトル別名
  • Political Science Education through Problem Based Learning
  • セイジガク キョウイク ト プロブレム ・ ベースド ・ ラーニング

この論文をさがす

抄録

元来、政治学教育の方法論は、アクティブ・ラーニングに触れても、問題解決学習(PBL)を十分掘り下げてはこなかった。また、実際にPBL を扱った数少ない事例においても、教員が学部生に研究事例を提示する形が多くを占めている。かかる状況と一線を画し、本稿は、あくまで学生が研究テーマを「発見」し、掘り下げるアプローチを想定する。すなわち、研究の全工程を学生グループが試みるには、どのようにPBL を運営するのか検討を加えたうえで、それに付随する諸課題を浮き彫りにしていく。 学生たちは、新聞、ニュース、インターネットなど身近な媒体を経由しながら、分析する事例を発見する。けれども、ようやくテーマ設定に達した学生たちの前には、小さくない問題が待ち構えている。すなわち、いかなる史資料を用いて検討を重ね、分析の視点をどこに求めるのか。前者については、新聞各紙が最も使用されているところだが、国会議事録やオーラル・ヒストリーを組み合わせれば、より高い確度で事実関係を再構成し、バイアスから距離を置く効果も見込まれる。後者については、グレアム・T・アリソンの手になるEssence of Decision が手掛かりとなる。アリソンが描いたのは、選択肢をめぐるアクター間の駆け引きである。この点を学生に意識させれば、5W1H を用いた選択肢の検討、因果関係に基づく推論へと道が拓かれてくる。 とはいえ、本稿は、さらなる課題も浮かび上がらせている。政治学が他分野との結び付きが強い領域である以上、それらとの関係を絶えず再定義する営みが求められるが、いまだ緒に就いたに過ぎない。それに、政治学固有のアプローチなどを解する専門指導者の確保も、長らく片隅に置かれたままである。かかる点への対応が、より効果的なPBL 政治学を構築するうえで求められよう。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ