ステレオタイプ,キャラクター,アレゴリーの結節点 : Ben Jonson 研究から見えること

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タイトル別名
  • Stereotypes, Characters and Allegory in Ben Jonson’s Comedies
  • ステレオタイプ,キャラクター,アレゴリー ノ ケッセツテン : Ben Jonson ケンキュウ カラ ミエル コト

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抄録

イギリス経済史の山本浩司氏は,最近の2 冊の著書Taming Capitalism before its Triumph: Public Service, Distrust, and ʻProjecting’ in Early Modern England(Oxford: Oxford University Press, 2018 )とStereotypes and Stereotyping in Early Modern England: Puritans, Papists and Projectors(Manchester: Manchester University Press, 2022)を刊行された。この中で論じられているベン・ジョンソン(Ben Jonson, 1572ー1637)のThe Devil is an Ass におけるステレオタイプとしてのプロジェクターに関する論考に注目し,まずは氏のステレオタイプをめぐる議論をまとめる。このステレオタイプについて,キャラクター,および文学分野での伝統的なアレゴリー表象に関する議論との異同を探りながら,拙論は以下の2 点について論じる。第一に,プロジェクターをはじめとする当時のステレオタイプは,芝居をはじめとする複数のメディア間や社会的文脈間の関係・付置を媒介する,いわば界面としての記号として機能し,その物理的な支持体である,特色の際立った人間達の姿が前景化され歴史化されるプロセスを追っていく際に興味深い社会現象であったこと。第二に,ジョンソンが,ステレオタイプ,キャラクター,アレゴリーの表象を,当該喜劇作品において「悪徳」をめぐるフィクショナルなプロットと,「ロンドンの都市」をめぐるノンフィクショナルなプロットの両方に配置したのは,そうした記号表象の重層性によって,特定の解釈のイデオロギーが覇権を握ることを防ぐとともに,一部の観客の歓心しか買えないような作品になることを防ぐための,劇作家としての生き残り術の一環として考えることができることである。

収録刊行物

  • 人文研紀要

    人文研紀要 105 297-323, 2023-09-30

    人文科学研究所

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