精神科ニューロングステイ患者を対象とした退院支援における看護師の困難

書誌事項

タイトル別名
  • Experience of Nurse’s Difficulties in Discharge Support for New Long-Stay Psychiatric Patients
  • セイシンカ ニューロングステイ カンジャ オ タイショウ ト シタ タイイン シエン ニ オケル カンゴシ ノ コンナン

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抄録

本研究の目的は、精神科入院期間1~5年のニューロングステイ患者を対象とした退院支援において看護師が体験している困難について構造的に明らかにすることである。  研究参加者は、民間単科精神病院3施設にて長期入院患者の看護を実践している看護師6名であった。データは半構造化面接法にて収集し、面接時間は一人あたり平均74.66分であった。研究参加者の許可を得て面接内容を録音し、逐語録を作成した。メタ研究法として構造構成的質的研究法を位置付け、分析枠組みとして修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを採用し分析した。  分析の結果、看護師の困難体験として困難と対処の2側面が明らかとなり、困難に関しては67概念から19サブカテゴリと5カテゴリを、対処に関しては38概念から13サブカテゴリと5カテゴリを生成した。これらカテゴリ間の関連性の検討を基に、精神科ニューロングステイ患者を対象とした退院支援における看護師の困難体験を構造化した。  退院支援上の困難として、入院が長期化するなかで退院支援における看護の停滞状態が続く【看護の慢性化】と、退院という【変化への抵抗】が医療者や患者、家族に生じていた。さらに精神科医療現場特有のシステムや文化に付随する【旧態依然とした慢性期病棟の風土】が背景要因として影響していた。これらは退院支援の流れを阻む要因となり、看護師の【退院支援の萌芽】は【退院支援の袋小路】に帰結していた。  一方、看護師は上記の困難への対処も行っており、困難を低減しながら退院支援を進めている構造が明らかになった。すなわち、【看護の慢性化】に対しては【惰性的ケアの解除】【患者の可視化】、【変化への抵抗】に対しては【抵抗・緊張の緩和】、【退院支援の袋小路】に対しては【突破口の模索】、【旧態依然とした慢性期病棟の風土】に対しては【組織の耕作】がそれぞれの困難の対処となっていた。

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