戦闘少女とコンテンツツーリズム

書誌事項

タイトル別名
  • Fighting Girls and Content Tourism

抄録

『リコリス・リコイル』を取り上げて、物語世界から現実世界への影響を考察した。物語では千束が超常的な力を持ち、自身の考えのもと行動している。その主体性こそ旧来の作品群との違いを示しており、孤児を集めて戦闘員に育て上げる組織と親代わりのように指導する男性の存在というこれまでの戦闘美少女でも設定されてきた構図をなぞってはいるが、そこで生じる不穏さや社会的な不自然さは消去されている。  物語の展開では教養小説などと同じような成長物語が描かれているように捉えられる。しかし非日常から日常への回帰というパターンではなく、主人公たちにとっての日常から視聴者にとっての日常への希求であり、主人公の成長というよりはバディの関係性の変化が描かれている。この点はコンテンツツーリズムにも関係し、単に舞台となった現実世界の場所を訪れるだけでは、物語世界をトレースしたことにはならない。特に作中で旧電波塔とされる東京スカイツリーは物語内の変形した状況を体感できない。しかし物語内で旧電波塔が脱歴史化され「平和の象徴」となっていった過程自体は、視聴者が目の当たりにする日常の東京スカイツリーへと概念として接続をしていく。

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