西之島の海洋生物相の速報

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  • Preliminary report of marine macrofauna of Nishinoshima Island

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抄録

2021年7月に西之島周囲の海洋環境および海洋生物相調査を行った。西之島の西側の海域では噴火の影響と思われる変色域が確認され、北側の海底は火山灰で覆われており、3m以上の溶岩様の岩や噴石と思われる尖った岩石が点在していた。本調査では、14門253種以上が主に西之島北側の海岸および海域より確認された。底生生物の多様性は低く、大型の海藻類やサンゴ類は確認されなかった。海底の岩石上に特に付着数が多かったものはヒドロ虫類とコケムシ類であった。これらは海底の裸地における群集形成の初期に加入する分類群であることから、今回観察した西之島周辺の海底環境は、群集の再生初期の状態であると考えられる。また、プランクトンの生物量が非常に少なく、貧栄養状態であり、底生生物の幼生はプランクトン全体の1.5%にすぎなかった。以上から、西之島への底生生物の加入と定着については時間がかかると思われる。しかしその一方で、2020年7月の大規模噴火後においても、西之島周辺の水深の深い場所には、元の生物群集が残っている可能性があり、そこからの幼生加入があれば、より早く生物の遷移がすすむと思われる。本調査では、海洋島における生態系の一次遷移の初期段階を記録できた。今後は、西之島周辺の深海域および、周辺の海流の状況や各生物種の繁殖シーズンなども考慮に入れ、海洋島である西之島の一次遷移のモニタリングを定期的に行うことが必要と思われる。

収録刊行物

  • 小笠原研究

    小笠原研究 49 113-168, 2023-03

    東京都立大学小笠原研究委員会

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