近代歴史教科書における「鎖国」観
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- 大島, 明秀
- 九州大学大学院比較社会文化学府 : 博士後期課程 : 国際文化専攻
書誌事項
- タイトル別名
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- The Aspects of “Sakoku” Appear in Historical Textbooks in Modern Japan
説明
筆者のこれまでの研究成果により、「鎖国」は近代の言説であるとする問題提起がなされてきたが、本稿では学制発布(一八七二)から『くにのあゆみ』(一九四六)までの小学校歴史教科書九四点を対象として、「鎖国」に関する記述を分析した。 その結果、自由採択期および検定期を通じて、「鎖国」に直接的な評価を付与した教科書は、僅かな例外を除いて確認できなかった。 ただし、神谷由道『高等小学歴史』(一八九一)に見られるように、明治二十年代から江戸時代の封建制度に対する否定的見解を打ち出すものも現れた。その際、当然のことながら「鎖国」も間接的に否定された。 第一期国定教科書『小学日本歴史』(一九〇四)において、「鎖国」政策に対する否定的評価が前面に推し出された。この見解は第二次大戦直後に刊行された第七期『くにのあゆみ』まで基本的に踏襲されていった。 ここにおいて明治二十年代の帝国日本で本格的に模索、形成され始めた「鎖国」観は、学齢児童の就学率九〇パーセント以上の状況下での国定歴史教科書の登場と歴史教科の義務教育化(一九〇七)を俟って、以降、急速に国民に根付いていき、言説となったと考えられる。
収録刊行物
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- 洋学
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洋学 (16), 113-144, 2008-03
洋学史学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050298532704301312
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- NII論文ID
- 120005323567
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- HANDLE
- 2324/27262
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles