アズマモグラおよびコウベモグラの舌乳頭の味蕾

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  • Taste Buds on the Lingual Papillae of the Lesser Japanese Mole and the Large Japanese Mole

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抄録

アズマモグラ(Mogera imaizumii)およびコウベモグラ(Mogera wogura)は,真無盲腸目モグラ科に属する哺乳類で,主にミミズや昆虫類を捕食する。舌は食物を最初に取り入れる消化器官で,舌乳頭には多くの味蕾が分布する。モグラ科では,味蕾を有する茸状乳頭と有郭乳頭,味蕾を持たない糸状乳頭の 3種類の舌乳頭が舌に存在することが報告されており,アズマモグラとコウベモグラでは舌上での茸状乳頭の分布に違いがあるとされている。また,これらの種の舌全体の味蕾の数や大きさなどの特徴は未だ調べられていない。そこで本研究はアズマモグラおよびコウベモグラの舌乳頭の味蕾の形態的特徴を外部形態観察と組織学的観察により調査し,2 種の違いおよび他の哺乳類と比較することでモグラ科の味蕾の特徴について検証した。コウベモグラの舌乳頭の外部形態観察を行ったところ,茸状乳頭は舌尖部から舌体部にかけて散在しており,Kobayashi et al.(1983)で観察されていない舌背の中央部分でも確認された。味蕾数はアズマモグラで 796 個,コウベモグラでは 459 個が確認できた。味蕾数は,草食性の哺乳類と比較して非常に少ない結果であった。平均味蕾サイズはアズマモグラで茸状乳頭が 37.9×28.1 µm, 有郭乳頭が 48.5×28.5 µm, コウベモグラでは,茸状乳頭が 35.0×24.5 µm, 有郭乳頭が 40.1×30.2 µm であった。これら 2 種の味蕾の大きさを比較したところ,有郭乳頭の高さで違いは見られたが,味蕾サイズはほぼ同等といえる結果であった。しかし,マウスの味蕾サイズと比べると本研究のモグラ類 2 種の味蕾サイズは明らかに小さかったが,味蕾サイズの他にも味蕾内の味細胞の割合も味覚処理の違いを反映すると考えられている。今後は,免疫組織化学染色を用いた味蕾内の味覚受容体の発現や同様な食性を持つ真無盲腸目のトガリネズミ科やハリネズミ科の種との比較研究が必要である。

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