退職給付に係る負債とイノベーション : 出願特許数と被引用特許数

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  • タイショク キュウフ ニ カカル フサイ ト イノベーション : シュツガン トッキョスウ ト ヒインヨウ トッキョスウ

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抄録

本研究の目的は,退職給付に係る負債とイノベーションについて実証研究を行うことである。具体的には,退職給付に係る負債が出願特許数と被引用特許数に与える影響について検証を行う。Acharya et.al[2011]では国際比較を行い,日本企業のリスク・テイクが最も低いことを報告している。野間[2015]では,日本企業のリスク・テイクが低い1つの論理を内部負債としての退職給付に係る負債の観点から解き明かしている。従業員へ付与されるストックプションはリスク・テイクを積極化するのに対して,内部負債はリスク・テイクを抑止する効果があり,その結果,イノベーションも抑止されることを示す研究がある(Bova et al.[2015],Chang et al.[2015])。またAcharya and Subramanian[2009]では債権者を優先する倒産手続きによってイノベーションが阻害され,債務者に有利な倒産手続きの下ではイノベーションが活発化することが報告されている。日本の確定給付年金は強く保護されており,イノベーションを阻害している可能性がある。では,イノベーションの質に対して,退職給付に係る負債はどのような影響を与えるのだろうか。本研究では,最小二乗法,ポアソン分布,負の二項分布等を仮定して実証分析を行い,退職給付に係る負債と出願特許数,退職給付に係る負債と被引用特許数との間にマイナスの関係を見出した。このことは,退職給付に係る負債が大きいほど,イノベーションが発生しにくくなることを示唆する。

本文は、「国際会計研究学会年報」(編集・発行:国際会計研究学会)2017年度第1・2合併号(通号41・42合併号)より転載

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