高校生のメンタルヘルスに関連する要因の検討 : 専門学科に通う生徒を対象として

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  • An examination of factors related to mental health in high school students : focusing on students attending specialized departments

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抄録

ストレス社会といわれる今日の日本で,高校生のメンタルヘルスに影響を及ぼす要因には人間関係や親子関係,生活習慣やストレス対処能力があげられる。これらは通っている学校に対する生徒の適応感に影響を及ぼし,不登校や中途退学といった学校不適応にも関係している。現代では高校生の学校不適応の問題が取りざたされており,高校生は小学生や中学生とは異なり義務教育課程ではないことから,高校生における不登校は出席日数の不足につながり学位の習得ができず,留年や中途退学の問題を生じさせる。また令和3年度の中途退学者の設置学科別調査によると,普通科に対して専門学科や総合学科では,全学科の中でも上昇傾向にあることが明らかとなっている。一方で,14~17歳の理想的な睡眠時間は8~10時間であるといわれているが,内閣府が行なった調査によると高校生の実際の睡眠時間は約7時間未満と短くなっており,生活習慣の乱れが現代の高校生のメンタルヘルスにおける重要な課題に挙げられている。 そこで本研究では,生徒のメンタルヘルスに及ぼす影響要因を探索すると共にメンタルヘルスの状態が良好ではない生徒の早期発見・早期対処を行える手立てについて,不登校や中途退学が多い傾向にある専門学科設置校に着目し,自覚ストレスの有無による検討を行った。また,仮説1として「高校生のメンタルヘルスに生活習慣,人間関係,親子関係,ストレス対処能力が影響を及ぼしている。」,仮説2として「高校生のメンタルヘルスの状態や変化を学校現場で早期発見・早期対処するためには出席状況が判断材料となる。」のふたつの仮説を立て検討した。その結果,以下のような知見が得られた。 自覚ストレスの有無による検討では「高校卒業後の進路」及び「志望理由満足度」といった項目が影響を及ぼしていることが明らかとなった(表1,2)。また,生活習慣,ストレス対処能力,メンタルヘルス,学校満足感,親子関係など全ての尺度に影響を及ぼしている要因に「ストレス解消法の有無」の得点間に有意な差がみられた。また,「志望理由満足度」の項目ではストレス対処能力を除く尺度の得点間に有意な差が認められた(表3)。次に仮説の検討では,仮説1について高校生のメンタルヘルスに影響を及ぼすものとして生活習慣,ストレス対処能力があげられた(図1)。また生活習慣やストレス対処能力,学校満足感には親子関係が有意に影響を及ぼしていることが分かった。さらに,生活習慣と学校満足感に相互に影響しあう関係が示された。続いて仮説2ではメンタルヘルスが出席状況に影響を及ぼしていないことが明らかとなったが,親子関係と生活習慣がともに出席状況のなかの欠課に有意に影響を及ぼしていることが認められた。また,遅刻には親子関係が有意に影響を及ぼしていることが認められた。 以上のことから,専門学科高校に通う生徒のメンタルヘルスに及ぼす要因にストレス解消法の有無や高校入学時の志望理由満足度,生活習慣といった生徒の身近な要因が複数確認できた。また,仮説1の結果を踏まえると生徒のメンタルヘルスの変化に気が付くための一助として出席状況に着目することの有効性が認められた。

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