パリ発、二つの展覧会見学の記録 : フォルチュニィの「番いになった鳥」とアルベルチーヌの日本風室内着

書誌事項

タイトル別名
  • A Diary from Paris Based on the Two Exhibitions : Fortuny’s "The Mating Birds" and Albertine’s "Japanese-Styled Gown"
  • パリハツ フタツ ノ テンランカイ ケンガク ノ キロク : フォルチュニィ ノ ツガイ ニ ナッタ トリ ト アルベルチーヌ ノ ニホンフウ シツナイギ

抄録

2022年から2023年にかけて、パリでは「マルセル・プルースト 作家の仕事場」と「キモノ」という二つの展覧会が開催された。本稿は両者に展示されたフォルチュニィの衣装から出発し、『失われた時を求めて』で描かれる、サン・マルコ聖堂の柱頭の「水を飲む番いになった鳥」をモチーフとしたフォルチュニィの(架空の)ドレスにおける「日本」を浮き彫りにしようと目論む。ジャポニスムが流行した時代には帯や着物の文様が人気で、フォルチュニィも自らの図案のインスピレーションの源の一つとした。その一方で、フォルチィニィの服飾品の中心は室内着(ローブ・ド・シャンブル)とその上から羽織るコートなのだが、17世紀ヨーロッパでは既に着物風の室内着(ローブ・ド・シャンブル)が流行した。ところでヴェネト・ビザンチン様式では「水を飲む番いになった鳥」のモチーフは稀ではないが、サン・マルコ聖堂に同じモチーフの柱頭はない。これはラスキンやマールの著作からプルーストが創造した東方(オリエント)を想起させる柱頭なのだ。同時にこれは、正倉院に由来しペルシャに起源を求めることのできる「双鳥」の文様をも想起させる。プルーストにおけるジャポニスムとは、「絹の道」シルク・ロードを辿り、ヴェネチアを経由し、20世紀のパリにまで辿り着いた「日本」の痕跡なのだ。

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