[論文] 幕末維新期新吉原遊廓における遊女屋・遊客・遊女 : 高橋由一画「花魁」のモデル稲本屋小稲ほか遊女の書状を素材として

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タイトル別名
  • [Article] Brothels, Customers, and Prostitutes of the Shin-Yoshiwara Red-Light District in the Late Tokugawa and Meiji Restoration Period : Based on Letters of Koina, Model for Yuichi Takahashi's Painting, A Courtesan, and Other Prostitutes of Inamoto-ya

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抄録

本論文は、新吉原遊廓の上層の遊女屋稲本屋抱え遊女が客に宛てた書状を中心的な素材とし、幕末維新期の新吉原の遊女屋と客、遊女の実像を明らかにすることを課題とする。稲本屋の抱え遊女小稲は、高橋由一による油彩画「花魁」のモデルとしても知られるが、一次史料に基づく検討は乏しく、稲本屋の経営実態や小稲の履歴など基礎的な事実も十分に明らかにされていない。そこで本論文では、第一に、「吉原細見」などを用いて、岡場所から新吉原有数の遊女屋となった稲本屋の経営の拡大過程、および遊女小稲の履歴などの基礎的事実を確定する。第二に、信濃国中野代官所領井上村の豪農坂本幸右衛門家に残る史料等を用いて、稲本屋の経営状況と客の特徴を明らかにする。第三に、小稲をはじめ幾人かの遊女たちが坂本幸右衛門ら豪農に送った書状を読み解き、遊女らの行動と意識、遊女集団の特徴などを探る。以上の分析からは、遊女屋、遊客、遊女の実像が浮かび上がると同時に、遊女集団における競争の組織化や序列の内面化、「仕置き」(暴力)などによって維持されていた幕末維新期の遊廓の実態が明らかになる。

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