生き残った元特攻隊員たち : 「特攻くずれ」の言説を中心に

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タイトル別名
  • After KAMIKAZE : Discourses and Narratives of Tokko-Kuzure (Ex-Suicide Attackers)
  • イキノコッタ モト トッコウ タイイン タチ トッコウ クズレ ノ ゲンセツ ヲ チュウシン ニ

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説明

卒業論文

本論文は.アジア・太平洋戦争の敗戦を径て復員した元持攻隊員について, 「特攻くずれ」という言説に.焦点を当てながら,彼らへのまなざしや,彼らを取り巻く戦後社会の一端を明らかにし,そのような時代を彼ら自身がどのように生きたのかを考察したものである。占領期の新聞報道や雑誌,元特攻隊員の手記,および元持攻隊員への聞き取り調査から事例を整理し,項目ごとに分析と考察を行った。まず第1章では.占領期の新聞報道において,復員軍人を温かく迎え入れることが呼びかけられ,彼らは「新生日本」の担い手として期待されたことを読み取った。とりわけ,元特攻基地の「再生」と元特攻隊員の「再出発」が「新生日本」の建設に重ねられて表象されていった一方で,同時期において犯罪者へと転落した元特攻隊員は「特攻くずれ」として報じられた。第2章では,「軍神」から転落した「特攻くずれ」をめぐって,世間の人々の間でどのような言説が展開されたのかを,当時の雑誌や新聞の読者投稿欄,手記などから検討した。「特攻くずれ」は闇屋をさまよう「野良犬」のイメージと結びつき,社会や学校からは「異物」として排除された。一方で,「純粋な若者」が権か者に翻弄され転落するという状況に同情を向ける声もあがっていたことがわかる。第3章では,そのような「特攻くずれ」という言説が生まれ,全国的に共有された社会背景について考察し,当事者がそのような世の中をどのように生きたのか検討した。 戦後社会にいることが想定されなかった元持攻隊員という存在は,復員兵の中でも敗戦の屈辱や無念が向けられる対象になっていたことが考えられる。そのような圧力は元特攻隊員を戦後数十年にわたって沈黙させた。また,そのような世論が反動的に「特攻くずれ」を生み出したことも明らかとなった。彼らは,自身の存在を懸けて,自身を排除しようとする社会に抗い,「特攻くずれ」」としてふるまったのだった。

収録刊行物

  • 日本学報

    日本学報 39 52-75, 2020-03-31

    大阪大学大学院文学研究科日本学研究室

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1050299693923656192
  • NII論文ID
    120007172010
  • NII書誌ID
    AN00030279
  • HANDLE
    11094/85165
  • ISSN
    02864207
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    departmental bulletin paper
  • データソース種別
    • IRDB
    • CiNii Articles

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