脳損傷と刑事司法機関の課題 ―TBI問題への対応―

書誌事項

タイトル別名
  • The Response of Criminal Justice System to the Brain Injury Problems
  • ノウ ソンショウ ト ケイジ シホウ キカン ノ カダイ : TBI モンダイ エ ノ タイオウ

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説明

犯罪学において脳と犯罪の関連性に関する研究は長い歴史を持つが、近年、欧米では、後天性脳損傷(特に外傷性脳損傷TBI)と犯罪・非行との関連が強調されている。これらの損傷は幼児期、少年期に多く発生し、その後も損傷自体が外見上は目立たないため、TBI問題の発見が難しく治療が遅れがちである。このため、非行や犯罪行動を引き起こす原因として考慮されることが少なく、適切な対応が行われていないのが現状である。もし犯罪や非行が脳損傷に起因するものであれば、これらの行動に対する責任の取り方や処遇が変わる可能性がある。実際、一部の研究では、TBI患者の方が非TBI患者よりも犯罪・非行にかかわる頻度が高いとする結果も示されており、それゆえに刑事司法機関や少年保護機関では、脳損傷の診断が重要である。しかも、脳損傷に関するほとんどの関連文献は医療関係者によるものあって、法学者や犯罪学者による研究はきわめて少ない。したがって、刑事司法機関や少年司法機関に対する提言は限られており、今後犯罪や非行を行った者が抱える脳損傷問題をこれらの機関がどのように扱うべきかを議論する必要がある。本稿は脳損傷問題に対して刑事司法・少年司法機関の演じる役割について論じるものである。

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