病理診断における診断支援AIの現状と導入への課題

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タイトル別名
  • The Current State of AI-based Systems for Pathological Diagnosis and Problems with Their Introduction
  • ビョウリ シンダン ニ オケル シンダン シエン AI ノ ゲンジョウ ト ドウニュウ エ ノ カダイ

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抄録

近年,医療現場における人工知能 (artificial intelligence;AI) 技術の進歩は著しく,病理診断の分野でも病理組織デジタル画像 (whole slide image;WSI) を用いて,病変の認識や定量,予後予測,特徴の抽出等を行う病理診断支援 AI システムが開発されている.本邦における病理診断の現場では,病理医数の不足と診断数の増加,報告内容の複雑化により業務の負担が増しており,将来的に AI を病理診断に導入することで,過重な診断業務の軽減や診断精度の向上,形態への情報付加が期待されている.病理診断支援 AI を導入するためには,病理診断支援 AI の医療機器承認,組織画像のデジタル化,標本の均質化や品質管理などの課題が挙げられる.また,病理診断支援 AI が患者の臨床情報や病態生理,採取条件などを併せた包括的な病理診断が可能かは不明瞭であり,病理診断支援 AI システムの進歩も必要と考えられている.病理診断支援 AI システムに対する社会的な関心は高く,病理の分野では日本病理学会を中心に,病理診断支援 AI をどのように取り入れるかの提言や様々な研究開発プロジェクトが進められている.その一方で,診断現場にいる多くの病理医にとって,AI の現場への導入は実感がなく,実際の診断にどのように役立つのかも明確ではないのが現状である.病理診断支援 AI システムの導入に向けては,組織標本をデジタル化するための設備投資やワークフローの構築など,可能な範囲で準備を進めつつ,研究の進捗や法律の整備,病理学会の動向など病理診断支援 AIを取り巻く動向を注視していく必要がある.

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