核エネルギーを社会に受け入れることの諸相 ―フィンランド共和国初の商用原子炉「ロヴィーサ1号機」建設をめぐる社会文化文脈―

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  • Nuclear Energy in Society: The Socio-Cultural Context of Constructing the Finland's First Commercial Nuclear Reactor,"Loviisa 1."
  • カク エネルギー オ シャカイ ニ ウケイレル コト ノ ショソウ : フィンランド キョウワ コクショ ノ ショウヨウ ゲンシロ 「 ロヴィーサ 1ゴウキ 」 ケンセツ オ メグル シャカイ ブンカ ブンミャク

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抄録

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現在、フィンランド共和国は発電量の3 割以上を原子力で得る政策を維持している。再生可能エネルギーと共に原子力利用も拡大させることに同国民は高い支持を与えており、その世論は福島事故後も揺るがなかった。執筆者はフィンランド社会の原子力利用への意思は、同国の冷戦期経験の所産と考える。第二次大戦後の国土荒廃に加え、重い敗戦国賠償に苦悶したフィンランドにとって、原子力発電の導入はエネルギー安全保障の最有力手段だった。しかし冷戦期欧州で原子力利用は、核武装の野心として国際問題と化す危惧も有した。フィンランドはIAEA を窓口に東西対立に与しない原子力利用を模索するも、原発建設に際しソ連から介入を受ける。最終的にフィンランドはソ連製炉心を西側機材で制御するキマイラ的原発を建設した。それは冷戦期に同国が模索し続けた外交関係における力学的安定性の象徴に他ならなかった。フィンランドにとって原子力とは社会文化文脈の結節点でもある。

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