ホンドワラジムシHondoniscus kitakamiensis Vandelの岩手県岩泉町の地下浅層からの発見と再記載

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  • New discovery and redescription of Hondoniscus kitakamiensis Vandel, 1968 (Crustacea: Isopoda: Trichoniscidae) from scree-covered slope, Iwate-ken, Northern Japan

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説明

Hondoniscus kitakamiensis(和名:ホンドワラジムシ)は岩手県岩泉町の鍾乳洞,龍泉洞において採集された標本をもとに,Vandel (1968)により新属新種として記載された.しかし,個体数が少ない上,記載された形質の記載や図示が少なかったため,新たな個体に基づいて他の形質を再記載することが期待されていた.一方,龍泉洞は観光客の増大にともない,自然水路にそって掘られた人工のトンネルにより水や空気の流通が起こり,次第に本種の生息環境は悪化して,近年では他の洞窟性動物と同様に龍泉洞や近隣の洞穴でも確認されておらず,その絶滅が危惧されていた.著者の一人である小松は,本種の分布域が他の地下性節足動物同様に地下浅層に広がっている可能性が高く,付近の地下浅層にも生息すると考え,その調査を行ってきた.その結果,2015年7月に龍泉洞口から西に2 km離れた宇麗羅山内の地下浅層から同属の未記載種を発見し,H. ureirensis(和名:ウレイラワラジムシ)として記載した.その後,2018年6月に龍泉洞付近の川岸の地下浅層から,白色無眼のナガワラジムシ類を3個体採集した(布村・小松,2018).これらは,その外形ならびに第2触角,オスの第1腹肢,第2腹肢の形態などの重要形質を観察した結果,ホンドワラジムシと確認されたので,従来報告されていなかった形質を新たに記載した.本種が洞穴だけでなく地下浅層にも生息する事実,さらに同属近縁種ウレイラワラジムシと単一山塊内に共存する事実は,本種の保全生態学および地下性生物における生物地理学的な観点からも極めて重要である.本種の分布範囲が,実際この地域内のどの位まで及ぶかは未知であり,今後の調査が望まれる.この標本は国立科学博物館および富山市科学博物館に保管される.

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