ドイツにおける共同監護と子の扶養料(2)

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タイトル別名
  • Geteilte Betreuung und Kindesunterhalt in Deutschland (2)
  • ドイツ ニ オケル キョウドウ カンゴ ト コ ノ フヨウリョウ(2)

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説明

本稿は,親による子の監護の扶養法的評価に関する研究の一環として,ドイツにおける親子扶養法の最近の状況を検討するものである。検討の焦点は,両親の離別後に子の共同監護がなされている場合における,ドイツ民法1606条3項2文の適用の可否にある。この規定は,監護親による監護教育を扶養義務の履行と規定しており,これを根拠として,原則として非監護親のみが扶養料負担義務を負うと解されている。この規律は,親の一方のみが養育者となる従来型の役割分担(引取りモデル)を前提としていることから,離別後に両親双方が子の監護に直接に関与する養育形態に適用できるかどうかが議論されてきた。今回は,連邦通常裁判所の判例の推移と学説からの論評を整理している。  判例【1】では,監護割合が母3分の2,父3分の1のケースにおいて,上記2文の適用が肯定され,非監護親のみが扶養料を負担するとされたが,傍論として,監護割合がほぼ均等な「交替モデル」のケースであれば1606条3項1文が適用され,両親双方がその資力に応じて扶養料を分担するとの見解が示されている。判例【2】は64%対36%のケースにおいても,2文の適用があるとした。これらの判例に対しては,他方の親による子の監護にも適切な考慮をなすべきであるとの批判的論評が加えられた。これを受けて判例【3】は,通常の面会交流の程度を越える「拡大交流」の場合にも2文が適用されるが,算定表上の操作による扶養料の減額が認められると判示した。判例【4】では,「交替モデル」において両親双方の扶養料分担義務が消滅することはないことが明言される。そして,判例【5】に至って,「交替モデル」における扶養料分担の詳細が示される。1606条3項1文の適用により,両親双方の資力按分による分担を基本とするが,計算の複雑さにはかなりの批判が向けられている。

収録刊行物

  • 比較法雑誌

    比較法雑誌 57 (4), 43-82, 2024-03-30

    日本比較法研究所

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