憶測に基づく報道実態の検証 : 全国紙が報じた米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳による違法賭博事件を事例に

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  • Examining the Reality of Reporting Based on Speculation : A Case Study of the Illegal Gambling Incident Reported by a National Newspaper by a Former Interpreter for Shohei Otani of the Dodgers in the Major League Baseball

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米大リーグ、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手の元通訳、水原一平氏が、違法なスポーツ賭博で多額の借金を背負い、穴埋めとして大谷選手の銀行口座から無断で多額の現金を引き出したとし、米国の検察当局は米国時間の2024年4月11日、元通訳を銀行詐欺容疑で訴追した。元通訳は発覚した際、米メディアに「大谷選手が借金を肩代わりしてくれた」などと告白し、その後に発言を翻した。大谷選手側も、関与を全面的に否定した。実際、連邦地検も、大谷選手は無断で現金を引き出された被害者であり、関与していたことを示す証拠はないとした。 しかし、日本や海外のメディアは当初、大谷選手の承諾なしに銀行口座から多額の現金を引き出せるのかなどの疑問点を挙げた。さらに、「大谷選手が違法賭博の借金とわかった上で肩代わりした場合」などの仮説や憶測に基づき、大谷選手に影響が生じる可能性を指摘する記事がいくつも確認できた。本研究では、日本国内で全国紙と呼ばれる新聞社がこの問題についてどう扱ったのかを検証した。 事件が日本で報じられた日本時間24年3月21日から、元通訳が連邦地裁に出廷して、罪を認めた同年6月5日までに、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞を対象に、掲載記事を検証した。結果、大谷選手が、元通訳の当初の説明通りに違法賭博と知った上で関与したという仮説や憶測を前提とした記事が5件確認された。ほかに疑念を連想させるような記事が16件あった。取材メモにとどめるべき内容を報じたメディアの対応に問題点を示唆できたものと考える。

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