遠心分離により血沈が生じた乳牛個体乳の血液濃度と牛群成績の関連性について

書誌事項

タイトル別名
  • Study of relationships between blood concentration in raw milk with blood sediment on centrifugation and head performance measures in individual cows

説明

酪農現場では乳房内出血が原因と推定されるピンク色を呈する生乳(以下、血乳と呼称する)が搾乳されることがある。血液混入の検査は目視(色沢)の他、乳業会社によってはバルク乳の遠心分離により血液沈殿(以下、血沈と呼称する)の有無を判定する精密検査を実施している。しかし、いずれの方法も血液混入の有無しか判断できず定量できないことから、筆者らは「とかち財団」が開発中の簡易型血液混入検査装置を用いて、現場で生じた血乳中の血液濃度を定量し、症状の推移や体細胞数などの牛群成績との関係を検討してきた。本研究では、個体乳を対象に遠心分離による血沈発生の有無と、血液混入量や牛群成績との関係について報告する。1酪農場(経産牛70~80頭)において、2年間に目視で確認された血乳は2個体であり、目視で確認できる限界濃度(0.01%)を上回る明らかな血乳が確認された。一方、同酪農場にて牛群検定の際に採取した個体乳(2020年9月の70個体乳と2021年9月の64個体乳)において、遠心分離により血沈が生じたのはそれぞれ6および5個体乳であり、血沈の発生割合は8.2%、血液濃度は 0.0004~0.0060%の範囲であった。血沈検出と非検出個体における血液濃度の平均はそれぞれ0.0022±0.0015, 0.0011±0.0008%となり、5%水準で有意な差が認められた。しかしながら、血沈が生じた個体乳11検体のうち2検体の血液濃度は非検出個体乳の平均値(0.0011%)よりも低く、さらに、血沈非検出個体乳123検体のうち7検体は、検出個体乳の平均値(0.0022%)を上回り、溶血などの原因により血沈が生じていない可能性が示唆された。したがって、遠心分離による血乳検査は目視よりも検出精度が高いものの、不確実な方法であることが示唆される。このことから、本研究で用いた簡易型血液混入検査装置で血液濃度を定量できる意義は極めて高いと考えられた。

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